競馬で家は建たない

これは、昔からある格言で事実『だった』

異常事態に気づいたのは28日の夕方だった。次の日に一緒に阪神競馬場に行くツレが話しかけてきた。「一番人気、何か知ってるか?」去年の年度代表馬シンボリクリスエス」か、現在2巻で3冠の期待も高い「ネオユニヴァース」のどちらかであることは明白なので、何を聞いとるんやと思ったのだが、その友人から聞いた名前は意外であった。「あんな、ヒシミラクルらしいで」
ヒシミラクル、今年の春の天皇賞でG1を制しているほか、3歳の時に菊花賞も勝っている実力十分の馬である。ただ、勝ち方が強さを感じさせない上に、春の天皇賞のイメージで長距離のみの馬であろうということから、前評判は高くなかった。それに相手が強すぎるであろうというのも避けられる原因になったはずである。なのに、1番人気。
まだこの時は人気の理由も知らなかったのではあるが。

その日の午前11時ごろ、ある男が馬券を持って東京にあるウインズ新橋にやってきた。その馬券を持って高額払戻窓口でその男はこう言ったそうだ。「この馬券をそのままヒシミラクル単勝にしてくれ」しかし、この金額が正常ではなかった。
なんとその金額1222万円也。人気が跳ね上がるのも無理はなかった。

その事実を29日の朝に知ったわけだが、皆の感想は「バカだなぁ」と思っていた。ヒシミラクルが勝つなんて誰もが思っても見なかった。しかし現実は想像を遙かに超えミラクルとなってやってきた。

1着ヒシミラクル。1着の賞金は1億3200万円。伝説となった男の配当金は1億9918万6000円であった。